人が物やサービスを買う理由
こんにちは!廣田信子です。
マーケティングの世界では、当たり前の理論になっていますが、
人は、理屈じゃなく、欲求で物やサービスを買い、その後理屈でそれを正当化する生き物です。
欲求が先で理由は後付けです。
でニーズ(必要性)とウォンツ(欲しいという欲求)を比べるとウォンツが強い方が
はるかに高額なものを買います。
不思議ですよね。
トイレットペーパー、ゴミ袋は生活に欠かせないものなのにニーズ(必要性)を満たすためのものは、
なぜか、できるだけ安いものを買おうとします。
それなのに、ブランドのバックや時計、化粧品などは、価格が高いこと自体に価値を感じ、
比べものにならないくらいの高額を出します。
ウォンツ(欲しいという欲求)を満たすための行動です。
で、ブランドのバックがどれほど丁寧に作られていてだからこの価格の価値があるから購入した…
なんて理屈は後付です。
同じように丁寧に作られている質のいいバックが半額で買えたとしても、
そのブランドのバックが欲しかったから買ったんです。
こんな話を書いたのは、管理会社の選択でもこの手の話はあるからです。
先日のセミナーでの相談でうちの理事会は、管理会社にべったりで、管理会社を変えれば2割は管理費が削減できるのに、理事が管理会社に丸め込まれていて検討する気がない。
自分が理事になって変えたいが…というものです。
聞けば、財閥系の管理会社です。
たぶん、丸め込まれているというより、その管理会社に管理を委託しているブランド感と
管理会社が何でもお膳立てしてくれて、最後の判断だけすればいいという感じが
何となく好きな方が多いのだと私は感じました。
管理業務を委託するということがニーズを満たすだけのものであれば価格が絶対になりますが、
ウォンツが絡んでくると別の判断基準が発生します。
このブランドが好きという住民意識は、けっこう根強いと感じます。
同時に任せて安心感も価値なのです。
で、ウォンツのためなら価格を合理的に説明できない部分も受け入れます。
この管理会社が、「任せて安心感」を継続して提供する努力を怠っていなければ管理委託費削減のための管理会社変更は結構むずかしいだろうな…と感じました。
逆に、ブランドを傷つけるような怠慢な対応をすれば、その時は火が付くでしょうが…。
このブランドが好き、任せて安心がいいというのは、なかなか表だって主張しにくいものですが
根強くあります。社員や管理員さんがおっとりしているのが好きという方もいます。
管理会社に対する考え方も実は、住んでいる方々の好みが大きく影響します。
管理会社変更でもめている管理組合の居住者の方が
「何で、そんなに管理委託費を下げなければならないの?今の管理費で十分賄えるし、
減額っていったって、戸当たり1か月にするとコーヒー一杯分じゃない。そのために苦労して、
もし今より悪くなったらどうするの?」
と言ったのがとても印象に残っています。
管理会社は、そういう心理に甘えることなく、自社が管理委託する価値を分かりやすく示していく義務が
あると思います。
この管理会社が好きだと感情で思ってくれている居住者に「なぜこの管理会社がいいのか」合理的に
説明できるものをちゃんと示してあげてください。
人間は、感情で判断していることを、理屈で裏付けしたい生き物です。
特に管理組合では、別の価値を持つ人にも分かりやすい理由が必要です。
価格以外の価値について書きましたが、管理費が足りない、管理費を修繕積立金に回さなければ
修繕ができないという切羽つまった管理委託費削減のニーズを持つ管理組合も
今後ますます増えると思います。
管理会社も様々な方向性があっていいと思いますし、管理組合もそれぞれの状況や文化にあった価値を選択できるのが一番です。
ご自身のマンションの状況を客観的に見て合意形成を図ってくださいね。