管理組合のニーズと理事長のニーズ
先日、管理会社の社員の方の交流会での出来事です。 あるマンションをリプレイスされたA社の担当者と リプレイスでとったB社の担当者が偶然いらっしゃいました。 B社の方が、 普通は、リプレイスでとったマンションは、 書類等がそろっていなくて引継ぎがたいへんなのに、 あのマンションは、書類が完璧に整理されていて、 引き継ぎもすばらしくて… どうして、リプレイスになったんだろうって 社内でも話題になったんですよ~と。 A社の方、 そうなんです。あのマンションは本当に力を入れていたんですが… どうも、理事長の意向をつかみ切れていなかったようで…と。 で、B社は理事長のニーズをしっかりつかんでプレゼンできたから とれたかというと、そうでもなくて、 結局、自社のどこが理事長のツボにはまったのか 分析しきれていないようでした。
普段はライバルである管理会社の皆さんも 管理組合をお客に持つ悩みは同じです。 管理組合に対して管理委託契約の業務を いかに質よく提供するかだけでなく、 理事長という個人(もしくは複数の理事)のニーズをくみ取り、 応えていかなければなりません。 日常管理の中で、いかにきちんと仕事をするかということは もちろん重要なことですが、 当たり前のこととして、その価値が見えにくく、 ちょっとした理事長との行き違いで、簡単にリプレイスになってしまう そんな現実もあります。 理事長のニーズが、管理組合のニーズ(大多数の人が求める価値)と 大きく違っていなければいいのですが…。 さて、その理事長のニーズですが…。 お話を聞いていると、それは、管理組合のニーズでなくて 理事長個人のニーズなのでは… と思う場面もあります。 特に、最近の成果主義の影響をもろ受けている理事長は、 自分の期に「成果」を上げることにすごくこだわります。 昔は、管理組合運営で「成果」というような概念が こんなに語られることはなかったと思うのですが…。 「成果」で一番分かりやすいのが経費の削減で、 経費で一番大きい管理委託費の削減は結果が残しやすいのです。 で、内容をよく検討しないで、住民の意見を聞くことなく リプレイスしようとしてもめることがよくあります。 最近、多いのは、防災マニュアルという「成果」です。 で、今期中に仕上げなければならないので、 あまり中身を考えないで超特急で、分厚いものをつくる。 最近は、作ってくれるプロもいますので…。 防災マニュアルは作ったものの、 周りが関心を示さず担い手がいないという話はよく聞きます。 こういったものは、時間をかけて、多くの方に参加してもらって 作るべきものです。 使われない防災マニュアルは本当は成果とは言えないのですが…。 大規模修繕工事を実施した、規約改正をしたというのも 分かりやすい「成果」でしょう。 で、一番、たいへんなのが、やはり修繕積立金の改訂(値上げ)。 消費税率アップと同じで、重要なことなのに、 なかなか評価されない、苦労が多い「成果」です。 しかし、後からとても感謝される「成果」です。 修繕積立金が豊富にあって積極的な管理ができるのは 早い時期に、将来を見越して、 大幅に修繕積立金の改訂を実施したところです。 あるマンションで取材をしたとき、理事長さんが、 今思えば、よくあの時期にこんな改訂ができたな…と。 その理事会にすごく感謝していますよ。 で、そのときの理事会は、積極的に様々な問題解決に当たり、 組合員の信頼が高かった、だからできたんだろうと。 もちろん、自分たちの成果にしなくちゃなんて発想は まったくなかったのではないかと。 う~ん、これって国政にも通じますね。 内閣支持率が高い信頼される内閣じゃないと、 痛みを伴う改革ができない…。 やはり、理事会は目に見える「成果」にこだわらず 地味でも目の前のことをきちんと片づけ 組合員に信頼される理事会を目指してほしいな~と、 「成果」という言葉を聞くと思っちゃいます。